あいうえお・ABC なぜ どこが むずかしい?どうしたら 読み書きできる?
21/89

ここまで、事例にしたがって「ありがちな見方」から「その子の立場になって寄り添う」ということを体験いただきました。もちろんこれは1つの事例であって、みなさんの中には異なる見方をされた方もいらっしゃると思います。しかし共通して言えるのは、「問題行動」は「不器用な対処」、そのときのその子なりの「精一杯の対処」と言い換えられるということではないでしょうか。 カッとなったAさんは思わず拳を振り上げ、近くにあった清掃用具入れに穴をあけてしまった。彼はとてもやさしい子でしたから、先生に暴力をふるうなど考えもしなかったのかもしれません。クラスメートに怒りの矛先を向けなかったことも幸いでした。しかし「不器用な対処の裏側にある思い」に心寄せることなく、厳重注意をするなどしていたら、その後どうなっていたかはわかりません。別のケースでは、仲が良いからこそ 「何やってんだよ。がんばれよ」と声をかけた友人に、たまりにたまった怒りをぶつけてしまったということもありました。 ここでは「後で話を聞いてくれませんか?」とでも言えばよかったかもしれません。しかしもしあなたがAさんの立場にいたら、そのような冷静な対処ができるでしょうか? 追い詰められた状況にいたら、私も机の上にうつぶせてとりあえず嵐が過ぎるのを待つかもしれません。だのに、「がんばるって約束したよね」「見せなさい」と迫った先生の態度に、問題はなかったでしょうか。異なる立場から見れば、思いに寄り添えなかった先生がAさんを追い詰めてしまったとも理解できます。 ただ「困った」と額を寄せ合わせているだけでは考えも深まりませんし、問題を見誤りがちでもあります。より具体的に考えるために1つの方法としてお勧めするのは、「What?:何?」「Why?:なぜ?」を繰り返しながら考えることです。

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る