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「これから支援を」「これからも支援を」とお考えの皆さまへ

 
 8月8日から10日まで、岩手県山田町、宮城県女川町、東松島市の学校等をお訪ねしました。復旧作業は思っていたよりも進んでいましたが、あらためて被害の大きさを思い知らされました。 
 さて、ここにきて再び、学校やPTAの方々などから「これから支援を始めたいのだが…」というお問い合わせをいただくことが増えてきました。被災された方々や、現地で支援にあたる皆さんから伺ったお話を中心に以下にまとめましたので、支援の参考にしていただければと思います。


まだ、支援は必要なの?

 必要です。大きな街から、小さな入り江の集落まで、生活基盤のほとんどすべてを奪われた地域もあります。
  「先行きが見えない不安もあり、晩のおかずのお豆腐一丁を購入するのもためらってしまう」との声も耳にしました。
  「ノートなど必要最低限のものはそろったが、ワークブックなどの補助教材は不足しがち」
  「どうにか授業は行っているが」などと聞くと、震災が基礎学力の低下という二次被害につながらないかと不安になります。
  ある中学校では、子ども達が元気に部活動に取り組む姿も目にしましたが、その反面、経済的な理由から部活動をやめる子も増えてきているそうです。
  「狭い仮設住宅の中で、職を失った保護者と子ども達が顔を突き合わせている」
  「子ども達への支援はもちろん、ストレスをためがちな保護者への支援も必要」とも伺いました。そして、そう話される方の中にも、「まだ家族が発見されない」という先生がおられるなど、子ども達のために奮闘されている皆さんへの支援も必要であると感じます。

どのような支援が必要なの?

  鉛筆や消しゴム等はほとんど充足されています。避難所として利用されていた校舎が学校に戻されるようになってきた今、聞こえてくるのが、
「保健室のベッドが使用できない状態」
「コップ代わりに使われていたビーカーなど、理科の実験器具が不足」
「地域に貸し出した清掃用具が戻ってこない。戻ってきたものも使用にたえない」などの声です。
 校舎が使用不可能となった学校では、少し離れた場所に仮設校舎をつくったり、お隣の学校と校舎を共有するなどしており、通学の足を確保するために、マイクロバスをという要望も多くあります。
 それじゃ、私達には何もできない? と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。 たとえば、毎月少しずつの募金活動など、私達にもできることはたくさんあります。
 金額の多い少ないの問題ではありません。私達が花苗を購入した東松島市内の園芸農家の方は、
「自分たちのことを忘れずにいてくれる人がいる。それが何よりの支え」ともおっしゃっていました。

品物を送る場合には

 当法人にも「最初の数ページしか使っていないノートが何冊かあるけれど」といった問い合わせがありました。「ないよりは、あったほうがいいでしょ」といわれれば、たしかにその通りかもしれません。しかしもしあなたがその場にいたとしたら、ある子には新品のノート、ある子には何ページか使ってあるノートで「がまんしなさい」といえるでしょうか。
 いらないもの、使っていないものがあるからではなく、自分が送られてうれしいものを送る。誰の手に届くか特定できない場合はなおさら、「自分なら、使い古しのノートでもうれしい」ではなく、「誰にでも喜んでもらえるもの」であることを心がけていただければと思います。

先方のニーズに合ったものを

 小学校に大学ノートを送っても、あまり喜んではいただけません。先方のニーズに合ったものを、できるだけまとめて送ることをお勧めします。
 ただし「必要なものを教えて」といっても、たくさんのお問合わせに応えることそのものが、現地の負担となってしまうこともありますので、注意が必要です。必要な物資を公表しているWebページを参照したり、支援実績のある団体を通して情報を収集されると良いと思います。 
 また、学校にお送りする場合は特に、国語12マスノート30冊とした方が喜ばれます。「8マス5冊、10マス5冊…、鉛筆も手元にあったものを少し」のような送り方をすれば、先方に仕分けの手間をかけることになります。
 さらに被災地域の経済の活性化という意味からは、現地で調達できる品は現地で購入できるようにすると大変喜ばれます。

どうやって届けるの?

 当法人でも、算数セットとの要望を受けてこれを集めたところ、他からまとまった寄付がありこれを生かせなかったことがありました。(算数セットをお送りいただいた皆さま、申し訳ございません)学校で必要とされる学用品や備品は数多く、ニーズも刻々と変化します。
 学校やPTAで物資を集める場合には、期限を定めて、迅速な対応を心がける必要があります。必要がなくなった地域に送れば、心のこもった品々もかえって先方の負担となってしまいます。発送前には先方のニーズを再確認しましょう。
 箱には、国語ノート何マス何冊と明記します。さらに一覧表を添えれば、仕分けの手間を軽減できます。

到着の確認には

 岩手県山田町で子ども達の支援にあたっている団体の事務所は、花巻市にあります。それは初めから知っていましたが、いざ行ってみると、花巻市から山田町までは車で2時間から3時間もかかります。今回もまた、知ってはいてもわかっていない自分に、反省をさせられました。
 各地で、「支援をしたのに礼もよこさないと、叱られた」とも聞きました。しかし、多数の礼状を書くために貴重な時間を奪われているということもあるようです。私達が訪問したどの学校のどの先生も、「支援していただくことが当たり前にならないように、感謝の気持ちを忘れずに」と言われていました。
 送付に際しては、「礼状等はご遠慮いたします」の一言を書き添え、到着の確認が必要な場合は、返信用封筒を同封のうえ、「本書に押印してご返信ください」とするのも方法です。

地域の人々による復旧・復興を進めるための支援を

 小さなグランドのほとんどが仮設住宅用地とされた学校では、子ども達が遊び場を失っています。そんな中で、地内の共有スペースを使って、子ども達の学習支援に取り組んでいる人々もいます。被災された方々が自ら立ち上がり、子ども達の遊び相手もつとめる学生ボランティアとともに活動されています。
 今後は、地域に暮らす人々が自らの手で復旧・復興を進めるための支援が重要になると思われます。被災地以外で物資を購入してお届けをすることは、お店を再開しようとされている方々のさまたげともなりかねません。そういった意味では、被災地で実際に復旧、復興活動に取り組む団体への活動資金の提供、またはそういった人々を助成金等の形で支援している団体への寄付も有効な支援方法と言えます。
 物資を必要な人のもとに届けるには、ガソリン代等も必要になります。一度や二度であれば自己資金でも対応できますが、それでは支援を継続させることが難しくなります。子ども達の居場所の運営に協力してくれるボランティアさんにも、せめて交通費ぐらいはお支払いしたいところです。ご相談いただければ、当法人でも、被災地域の学校や、現地で直接子ども達の支援にあたっている団体等をご紹介いたします。

継続的な支援こそ

 今回の被害は甚大です。特に原発事故被災地域では、20年、30年という単位での支援が必要になるのではないでしょうか。
 私達は今、身近な子ども達に、「月に1回、ジュースやお菓子を買う代わりに100円募金を」と呼び掛けています。保護者に負担を強いるような募金活動は問題ですが、「かわいそうな人達のために、何か持ってきて」というのもどうでしょう。私達も、「机の中に眠っている文具を」ということで活動を開始しましたが、認識不足があったように思います。大切なのは、思いを共有できるよう心がけることではないでしょうか。現地のニーズは刻々と変化するともお話ししました。これに対応するためにも、今後は地域ぐるみでの募金活動をお勧めします。学校や会社などで電気代を節約し、全額ではなくても定期的に、いずこかの町や学校に送るなども考えられると思います。
 学校等では、「募金活動は難しい」とおっしゃる方もいますが、思いを共有できなければ、どのような支援も意味合いを半ば失ってしまうと思います。それができたなら、活動は被災した子ども達のためだけでなく、支援に参加した子ども達の心を育てることにもつながると思います。形式にこだわらず、ニーズに応じた支援を検討いただければと思います。

支援金はどこに?

 何らかのつながりがあれば、直接、学校やその地域に募金を郵送されるのも方法です。「現金では何に使ったのかがわからない」という方もいらっしゃいましたが、信頼できないと思えば支援はできません。
 特にどこの町のどの学校とお考えでない場合は、身近で支援実績のある団体にお問い合わせされることをお勧めします。今夏、被災した子ども達のためのサマーキャンプが各地で開催されていますが、多くの団体が必要経費の工面に苦労されているようです。このような活動を支えるための支援も、検討いただければと思います。

最後に

 今回の震災では、多くの著名人による支援活動が注目を集めていました。それはそれでとても素晴らしいことだと思います。被災地では、献身的な活動を続ける自衛隊員や警察官の皆さんへの感謝の言葉も多く耳にしました。「勝手だと思いながらも、早く、とお願いした」という方は、路傍でおう吐しながら作業を進められる姿を目にして、思わず心の中で手を合わせたおっしゃっていました。
 その一方で、4月に北茨城市に伺った際に記憶に残ったのは、地域に暮らす方と消防署員が協働して体の不自由な方の避難にあたったというお話です。消防署では日頃から、一人で避難することが困難な方々についての情報を集めていたそうですが、個人情報保護法があだとなり、思うに任せずにいたそうです。
「寝たきりの方はいらっしゃいませんか」と呼び掛けられても、答えるすべはありません。こんなときにこそ、身近な人と人とのつながりが大切だと知らされたお話でした。
 沿岸部から避難された方々がどっと押し寄せた会津若松市では、急きょ必要となった炊き出しに地元の企業やNPO、そして「会津学生ボランティア連絡会」の学生達が活躍をしました。災害に強い街づくりには、コミュニティーの活性化も重要な案件となることは間違いありません。それは誰かのために誰かにお願いする課題ではなく、私達自身が取り組むべき課題です。

 校舎が使用不能とまではならなかったものの、直接津波の被害を受けた学校では、塩害により学校の植え込みが枯れるなどしています。「花壇に入れる土を」との声も聞かれましたが、これを遠くからお届けしたのでは、送料もかさんでしまいます。地域によってはいまだに子ども用下着などの要請も届いていますが、一人ひとりのサイズをまとめて送っていただくのもひと手間です。体操服であれば、みんなと同じ体操服を揃えたいところです。それにはやはり、現地で購入していただくしかありません。
「役に立つことができたという実感がほしい」というお話もよく伺いますが、これから支援をお考えの皆様には、ぜひ現金での支援も検討いただきたいと思います。

 このたびの震災でも、辛い思いをした子ども達は、一人ひとりが明日の社会を担う素晴らしい人として育ってくれることと確信します。また、そうなるように支え続けることが私達の役割だと思います。
 9月末日で義援金の受付を終了する団体もあるようですが、これからが、私達の本当の出番なのかもしれません。皆さまにもぜひ、支援活動の輪に加わっていただけますよう、また、現在の活動を継続いただけますようお願い申し上げます。非力ながら、私達もできることを少しづつ継続したいと考えております。
 最後になりましたが、これまでご協力をいただいた皆さまには、心からのお礼を申し上げます。

2011年8月20日
NPO法人リヴォルヴ学校教育研究所
理事長 小野村 哲