実際には、暴力行為によって迷惑をかけたことに対して、厳重注意をし、反省文を書かせるなどして一件落着とすることが多いのではないでしょうか。しかしここで改めて「なぜ、厳重注意や保護者への連絡をするのか」、またそれによって「どのような状態を達成しようとしているのか」を考えてみましょう。 とりあえず「ごめんなさい」と言わせることでしょうか? それとも反省を促し、暴力など振るわないようになることでしょうか? では、厳重注意をしたり反省文を書かせたりすることで、成果が期待できるでしょうか? 多くの方の答えは、「おそらくNo(ノゥ)」だと思います。そもそも「反省を促す」ということは、「自分が悪いことをしたとわかっていない」という前提があってこそだと思いますが、Aさんにはそれが「わかっていない」のでしょうか?「わかっていないこと」とそれを「認められないこと」とでは意味が違います。「わかってはいても受け入れられない」のだとしたら、反省を強いることはマイナスにしかならないでしょう。一時的に改心の様子が見られたとしても、「なぜ、受け入れられないのか」「そこにどのような思いが秘められているのか」、そこに寄り添うことができなければ、根本的な解決は望めません。ひと時は収まったとしても、いつかまたストレスを爆発させたり、自信も意欲も失って塞ぎこんでしまったりするかもしれません。 それとは別に、保護者には壊した清掃用具入れの弁償に関する連絡も必要かもしれません。しかしこの段階で電話を入れるとしたら、どのようにお話をすることになるでしょう。 「英語の授業中、宿題を見せるようにと言ったところ、突然切れてしまって…」と説明を受けた保護者は、 「切れるような子じゃなかったんですけど、どうしたんでしょうか?」とたずねるかもしれません。保護者の身になれば「突然切れて…」というだけで、なぜ本人も骨折するようなことになったのか説明がなくては納得いかないのではないでしょうか。
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