② 何が問題なのか:Aさんを主語にして見直す Aさんの行為はたしかに「問題」であり「困ったこと」に違いはないでしょう。しかし「清掃用具入れを壊した」「授業を妨害して迷惑をかけた」などという文言を見ていると、困っているのはAさんよりむしろ先生の方であって、その視点も先生サイドに偏っているように感じられます。 保護者にたずねられるまでもなく、私たちは「Aさんはなぜ暴力をふるったのか」ということについて洞察を加える必要があります。それは言うまでもないこと… であるはずですが、現実には「暴力をふるった」「器物を破損した」といった表面的事実だけに目が行って、「その子を見ること」や「その子の立場に立って考えること」が疎かになりがちです。相手の立場に立つことは容易なことではないと自覚すること、わかったつもりでいれば見えるものさえ見えなくなりがちであることをここで再確認したいと思います。 「なぜ、そのようなことをしたのか?」という問いに対して、「切れやすい子だから」「乱暴な子だから」といった答えを聞くことも少なくありません。しかしそれでは、質問を言いかえて繰り返しただけに過ぎません。なぜ、何がAさんを、切れやすく、暴力的にしたのか。友達とケンカをしてイライラしていたかもしれませんし、ホルモンの分泌過剰など身体的な理由があったかもしれません。実際には様々な理由が考えられます。 しかしここでは「授業についていけない自分にあせりや苛立ちを抱えていた」と仮定してみましょう。だとしたら、対処はまったく違ってきます。私たちはそんなAさんにどう対処すべきでしょうか?
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