はじめに みなさんは、初めて自転車に乗れた日のことを覚えていますか。考えてみればあの不安定な乗り物に乗るのは、簡単なことではありません。しかし、一度自転車に乗れるようになった私たちは、その難しさを意識することなくペダルをこぎ、風を切って走っています。 私は一輪車に乗れません。「あんなものにどうして乗れるのか?」とさえ思います。しかしこれに乗れる人は、「一輪車も自転車も同じようなものなのに、どうして乗れないの?」と不思議に思ったりします。 「読み、書き」についても同じことが言えます。難しさを忘れてしまった私たちには、そこでつまずいている子の‘しんどさ’が理解しにくくなります。「数学は天才的だけれど、どうにもアルファベット(英語)が苦手だ」という人、「漢字はたくさん知っているけど、書けと言われると…」という人もいます。そもそも苦手がない人などまれだと思いますが、私たちはことさら不得意ばかりを言い立てて劣等感を植え付けてしまったり、学ぶことそのものを嫌いにしてしまったりしがちです。「わかっているつもり」に陥りやすい私たちは、そんな自分に気がつかないでいることも少なくはないように思います。
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