学びの支援の質を高めたいと思うなら、まずは「見ること」から始めるべきではないでしょうか。具体的な手立てを考えるにしても、無理のない到達目標を設定するにしても、その子が今どのあたりにいて、なぜ、どんなところに難しさを感じているかをよりよく知ることが大切です。 そこで本冊の第1章では、具体的な事例をあげて、「見ること」について皆さんと一緒に考えてみたいと思います。「よく見ているつもり」でいれば「見ようとする姿勢」そのものが損なわれ、わかるものもわからなくなりがちです。 第2章では、読んだり書いたりすることの難しさを再認識していただくために、その困難を疑似体験していただきます。あらかじめ確認をしておきたいと思いますが、疑似体験はあくまでも‘疑似’体験であって、すべての子どもたちの困難を説明しようとするものではありません。困難の度合いは人によって異なり、その理由もそれぞれいくつかが複雑に重なり合っているものと考えられます。しかし、疑似的にでもその困難を体験するということは、「わかったつもり」に陥ることを防ぎ、洞察を深める端緒としていただけるものと確信します。 そして第3章では、苦手を防ぎ、得意を伸ばすための具体的な手立てを紹介させていただきます。忙しい日々を送る皆さんの中に「理屈よりもすぐに役立つ手立てを…」という声があるのは当然のことだと思いますが、胃が痛いときに頭痛薬を飲んでも効能は期待できないように、どのような手立ても用い方を誤ればマイナスにさえなり得ます。第1章、2章と順を踏んでお読みいただくことをお勧めいたします。
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