もし少年野球の選手がプロ選手の真似などしていたら、コーチは基本からというでしょう。しかし書く練習では「最初からお手本通りに、正しく美しく」というのが常識です。しかもそのお手本は、なぜか書家が書いたものであったりするのです。そもそも平がなは漢字の草書体を簡略化したものです。その微妙な傾きや丸みは、小学校入学前後の子どもたちには認知が難しいと言われます。 右は小学4年生が、私の誕生日に書いてくれたカードに書かれていた文字です。 書くことを好まなかった子が心を込めて書き送ってくれたものですが、これでは ちょっと読みにくいかと思います。しかし隠されている部分までご覧いただければ、先ほどの「醤油」と同様、どうにか読んでいただけると思います。 ▶ 右の画像をクリックすると、隠されている部分の文字がご覧いただけます。 「いつも」の「い」はカタカナの「リ」のようにしか見えませんが、小学校高学年になってもこのような字を書く子は少なくありません。しかしそれでも、心を込めて書いてくれたものを「間違い」などと言えるものではありません。初めて書いた文字を「書けたよ。見て!」と言ってきた子に、「お手本通りに、正しく美しく」と言ったところで何になるでしょう。苦手意識をもった子にダメ出しをして意欲を奪うくらいなら、「い」が「縦棒2本」になったとしても、「書けたこと」「書こうとしたこと」を認めたいものです。 もちろん、上手に書ける子には「お手本通りに、正しく美しく」も良いでしょう。大切なのは、今、その子がいる場所から一歩先、すなわちプラス1を目標とすることです。
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